失われた楽園
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シラーズから車で約2時間、土漠の山道の一本道を進んでいくと、急に山に緑が増えてくるのに気が付きます。

今回は、イラン人の女性のみの団体1日旅行です。イラン人は、基本的に家族で旅行や郊外へ遊びに出ます。それがだんだん女性が自立するようになり、10年以上前では考えられない、主婦たちだけの集まりで旅行する、ということが見られるようになりました。バスの中で、陽気な音楽に合わせて踊りだすのは日常茶飯事です。

山道を降りて小さな村に入ると、水を張った水田の脇に緑に育ったコメの苗がおかれていました。田植えの準備です。向こうには、ダムが水をたたえて青く光っているのが見えます。今年の春には、例年になく5月下旬まで雨が降り(イラン中央部は、4月末から10月初めまで雨が降りません)、時には洪水になるくらいの勢いでした。ここ数年、干ばつにも似たカラカラ天気が続いていたので、特に農家にとっては本当にうれしい雨です。ここは、ファルス州の穀倉地帯で、特にここで穫れるコメは、他のイラン米に比べてジャポニカ米に似てでんぷん質の多いものです。

村道を抜けて砂利道へ入っていきます。両側に細い流れが見えてきます。木々の緑と水の流れ、なんともうれしい風景です。広い駐車場の向かいには、お茶やお菓子、アイスクリームなどを売る店が並んでいます。その前に、仔馬が母馬のそばにおとなしく寄り添っていました。滝までの10分ほどの道のりを歩いていくのが困難な人を乗せて運ぶ役目です。

砂利道を行くと、下を流れる水の量が増えていき、子供たちが水遊びをしているのが見えます。うっそうと茂った樹々の下を歩きながら、シラーズからほんの2時間でまるで違う風景を見られることに驚きます。

水の音が人々の声をかき消すほどです。ファルス州の年間降水量が200ミリほどなのに、ここでは、1秒に200ミリ以上の水が落ちてきています。ザグロス山脈の恩恵を受けた、失われた楽園、の姿です。

この日は金曜日、イランの休日です。昨晩からの泊り客のテントがたくさん並んでいます。これだけ人が集まっても散らばったゴミが少ないのは、教育の成果、たくさんのごみ箱の設置効果もありますが、清掃係がちゃんと清掃してくれているからです。
この夏、一押しの避暑地、失われた楽園へぜひ、行ってみてください。


